赤ちゃんがおとなしくしていれば、親は安心?

 このタイトルは、何を表しているか分かりますか?あかちゃんは、寝ているとき以外は目を覚ますと泣く、おしっこをすると泣く、お腹がすくと泣く、お母さんの顔が見えなくなると泣くといったように、何かを訴える時には泣きます。泣くとお母さんが赤ちゃんの顔を見ながらおむつを触ったり口に指をあてたりしながら泣いている理由をさがしておっぱいを飲ませたりします。赤ちゃんは、歩き始めるまでは右脳が成長していきます。歩行が出来るようになると言葉を使うための左脳が成長を始めます。それまでは泣いて意思を伝えることしか出来ないので、赤ちゃんはうるさいということです。歩く時期になると常に歩き回りおとなしくしていることが無くなるため目を離せなくなります。お母さんにとっては楽が出来ない時期になります。外出しても長くベビーカーに乗っているのを嫌がって泣いたりするので、電車に乗っても気まずい思いをします。こんな時私たちが子育てをしていた30年前では、ベビーカーを折りたたんで抱き上げてご機嫌を取ったり、隣のご婦人があやしてくれたり大変な思いをしました。最近は、ベビーカーを折りたたんでいるのを見たことがありません。寝ている赤ちゃんが多いのですが、スマフォを持っているのを時々見かけます。スマフォで動画を見ていると意味が分からなくてもおとなしくじっとしていてくれます。親も周囲に迷惑をかけずに済みますので安心していられます。

 アメリカでは、10年前から0歳児から3歳児までの乳幼児を対象とした幼児向け知育シリーズのビデオがBA社から販売されてヒット商品となりましたが、ワシントン大学の研究チームがこのビデオを視聴していた生後8か月から16ヶ月までの乳児1,000人を調べたところ、1日に2時間以上見た赤ちゃんは、言語能力の評価において、見ていない赤ちゃんよりも悪い結果が出ています。

 米国小児科学会では、画面がオンになっていると赤ちゃんが言葉を学ぶ上で欠かせない「親が子どもに話しかける」という行為が減る、お母さんとアイコンタクトをする時間や、表情を読み取る時間が減るため、2歳以下の子どもに画面を見せないように推奨しています。

 私の臨床でも、1歳まで普通に成長して歩くようになった子が、母親がスマフォを見せるようになって2歳児検診の時に発達障害という診断をされ、歩き方も逆戻りしてつま先歩きをするようになって、3歳になっても言葉がしゃべれない。スマフォを取り上げようとすると奇声を上げて離さない依存傾向が表れてしまったケースがあります。

 子育ては、もともと楽なことではありません。子育ての経験からたまには楽をしたいと思います。しかし、スマフォのような便利なツールが、知らないうちに家族を不幸にするツールになることも知っていただきたい。